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モリの洞窟

モリエールの妄想の洞窟へようこそ

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…結局、無駄に長くなってきちゃって…w
ここで切っておかないと、UPの時異常に重いので失礼します。
第3話です。
タブン次で終わると思われ…
ちとさんのイサをどう動かそうか脳内妄想中。
しかも無断、無断><*

第3話はつづきからお読み下さい^^

第2話http://morinodoukutu.blog.shinobi.jp/Entry/881/

【拍手御礼】
・拍手ぽちっとありがとうございました!


【ナルシス 邂逅(第3話)】

「待てーーーっ!!このくそガキどもっ!!」

今日も通りで子供たちが盗みを行う。
騒ぎに乗じて、群れを成さぬ自分も、目が向いている隙を狙って、持てる分、食べる分だけを頂戴する。
群れに入れば、この虚しい心は埋まるのだろうか。
盗みに成功して、住処へと戻っていくその子らの足どりは軽やかで、楽しげで。
物陰からそっと盗み見ていると、一人がたまらなく淋しいものに思えた。
淋しいと思うその時だけ羨むのだ。
あの輪の中に入ると、きっと今度は一人になりたいと思うだろう。
あえて一人でいられる場所を好んで探している自分が、今更どうなりたいというのだろう。
自重するように、頬を引き攣らせると、隠れる場所を求めて立ち去った。

「…ここは…」

歩く姿が見られないように、すっかり闇夜となってから、住処へと移動していた先に、出入り口を怪しい色の明かりで彩るあの店があった。

「…ここに出ちゃったか…」

どうやら曲がる場所をひとつ間違えたらしい。
人がいないか用心して、道を戻ろうか、そのまま通っていこうか瓦礫に身を屈めて思案する。
見つかったとしても、果たして今も自分に価値があるのか不明なのだが。

ギギギ。
錆びついたような不快な扉の開く音が聞こえてきて、そっと物陰から店を伺った。

「遠くに処分してこいよ」
「わかったよ。戻ったら残りの金をちゃんと寄こせよ」

聞き覚えのある声だった。
それは忘れもしない、店の主と、あの2人組の片割れの声だ。
気配を消して覗く先に、店から出てきた2人組が、何やら布にくるまれたものを2人がかりで運んでいる姿があった。
運ぶ重みから、中のものは人で間違いないだろう。
店の脇道に2人は入って、すぐに闇にまぎれて見えなくなった。
人を運んで、どこに行くのだろう。
仲介屋から、さらに売り手に運ぶところなのだろうか?
だとしたら、栄えている通りに向かうはず。進んだのは通りとは反対の方向となる。

「……」

奴らに関わると碌なことにならない。
そう思う気持ちもあったが、どこへと向かう気なのか、それを確認すべく、足音を消しながら、2人組の後をつけた。

重たい雲が立ちこめる闇夜に、うっすらと白く浮かぶ瓦礫の散乱する道を、ブツブツ小言を言いながら二人は歩いていく。
互いが闇を見慣れた者であるため、距離をとり、慎重に後をつけていく。
何かを運んでいるために、歩みは遅く、話し声をあげるため、後はつけやすかった。
ピンと張り詰めた空気が漂う中であれば、年上であり、この暮らしに熟練している2人にはすぐにバレたであろう。

「この辺りでいいんじゃないか?」
「そうだな。元々行き倒れを捨てる場所でもあるしな…」

路地から道路の高架下の空き地へと入り込むと、しばらくしないうちに、ドサリという鈍い音が聞こえてきた。
これから何かするのだろうかと、耳をすませていると、戻ってくる足音を聞きつけて、すぐさま近くの軒下の暗闇に身を滑り込ませた。

「美人もああなると憐れだな」
「壊れちまえば、しゃあないだろ」

運んだものは捨てたらしく、手ぶらの2人が足どり早く、来た道へと戻ってきた。
2人の足が、息をひそめて隠れているすぐ傍を通り過ぎていく。
一人の足には、自分から奪った靴が相変わらずはまっていた。
足音が遠ざかり、完全に聞こえなくなってから、軒下から這い出し、奴らが捨てに入った場所へと忍ぶように、近づいていった。

「……」

建物の砕けた残骸を覆うように草が伸びている中を、慎重に歩みを進める。
辺りには動くものの気配はまったくない。
話してた内容から、捨てたものは人に間違いないのだろう。
あの店に囚われていた誰かなのだろう。
自分に何かできるわけでもなく、ひとつため息を漏らすと、その場を立ち去るべく向きを変えた。

「…ぅぅ…」

小さな呻く声が聞こえて、一歩踏み出そうとしていた足を止めた。
近くだ。
このどこかから。
暗がりの中、目をこらして、辺りを見回す。
声が聞こえた場所を想定して、探るように歩く。
風が出てきて、茂る草がザザーと揺れる。
分厚い雲が流れ、すでに昇っていた天空の月が白く辺りを照らし始めた。

「……!」

長い髪。白く細い手足。薄く体にまとわりつくような服。
華やかであろう色は、月の光の下、色あせて見えた。
そして苦悶に満ちた顔は、全体の華やかさを損なうように、目の下が窪んでしまっている。
それでもその顔は、間違いなくあの女だ。
前に自分を逃がしてくれた女の姿がそこにあった。

脇に屈むと、手を女の顔の前でかざした。
弱いけれど息がある。
まだ生きているのに、ここに捨てられたのだ。
朝になれば、日が昇れば、ここには骸を好む鳥が大勢集まってくる。
それをわかってて、捨てていったのだ。
生きていようと、死んでいようと、動けなければ捕食されてしまう。
いくら前に会った時より痩せたとはいえ、自分より頭二つは背の高さのある人物だ。
どこかに移動させるには、自分はまだ小さすぎた。
ここまで弱っている人物を、どうやって運んだらいいのかわからなかった。
雲が切れて、差し込む月明かりを頼りに、辺りを見渡す。
この辺りで、鳥に見つからずに済むような、入り込めない場所があれば何とかなるかもしれない。
高架下の瓦礫が重なる場所に目星をつけると、女の体を運ぶため、手をとった。

「……」

まるで死骸のように体温がなかった。
このままにしておいた方がいいのか、また心に迷いが生まれた。
何かしたところで、苦しませるだけなのだ。
今までだって、こんな風に死に掛けた人物を数多く見てきたではないか。
なぜ、今こうしてこの女を助けようとしているのか。
こうして自分がこの場にいるのは、あの日売られそうになっていた自分を逃してくれたからだ。
でなければ、どんなことに自分がなっていたのか知れない。
それは、助けるに充分な理由だ。

「……」

日々を生きる以外に、動くためには思いきりが必要だ。
要らぬ労力は、体力を使う。
体を動かせば腹が減る。
減れば、危ない盗みにすぐに挑まなくてはならなくなる。
通りの店は、小さなコソ泥に我慢の限界となり、最近警備の人物をつけるようになった。
銃を武装した男たちを前に、非力な子供はあっと言う間に掴まった。
脅しに屈しない子供は、態度によっては気まぐれに撃ち殺された。
もちろん、それは通りから外れて、人のいない場所で行われるのだ。
聞きなれない乾いた銃声に、そっと物陰から覗くと、見せしめとばかりに無残な姿で捨て置かれていた。
ここに暮す者達は、それすら不運だったと思うしかない。
そうされても、盗みを働かなければ食べ物を得られないのだ。
それらがいない時間を狙ったり、おとりを使って巧妙に追いかけさせたり。
危険を承知で挑むしか選択がない現状だ。
食えずに死ぬか。それとも万が一の可能性にかけるか。
自分はその狭間をうまく利用してやり過ごしてきたが、この先はもっと厳しくなるだろう。
はじめのうちは、銃で散らすだけだったのが、いまや的として確実に狙ってきている。
事はエスカレートし続けている。
次は自分が命を落とすかもしれない。
日々をただ生きてるばかりで、今更命を惜しがるのも変な話だと自分に自重すると、女を運ぶための布か何かを調達すべく、その場から駆け足で離れた。

久しぶりの住処への入り口を、這うようにしてくぐり抜けた。
そこは以前と同じく静まり返り、あの2人組の姿はなかった。
あのあと戻ってないことを確認してるだろうから、ここへはよほど用事でもなければこないだろう。
それに今夜は、女の処分で金を得たはずだから、ここへ来ることは間違いなくないだろう。

「……」

久々の住処だ。
何も変わってない。
正面にある廃屋には、前と同じく一つだけガラスの入った窓が健在していた。
他は窓枠からして壊れたりして、空虚な穴を黒く見せているのだ。

アイツはまだここにいるのだろうか…。
あの2人に見つからないよう、息を殺して静かに暮しているのだろうか。

そっと覗いたガラスの窓に、自分と同じくらいの子供の姿が映った。

「…よかった…」

会えたことが無性に嬉しかった。
無事に暮していたことがわかって。
自分と同じで、髪の毛を切ることもなく、伸ばし放題にしてるみたいだ。
それが何だか可笑しくて、つい笑ってしまって。

「ごめん。長くはいれないんだ。また来る…」

聞こえるとは思えない声音で呟いて、静かな佇まいで立っているアイツに向かって軽く手を振った。
同じように手が振りかえされる。
何だか嬉しかった。
待っていてくれたんだ。
そう思うと、またここにくるため、今を生きようと思えた。

それからすぐに気持ちを切り替えて、住処にしていた土管を覗いた。
あれから一年近く経つというのに、あの寒い日にまとっていた布がそのままになっていた。
水を飲むためのボロい器もあった。
ついてる。
水を近くの水溜りで調達して、布を抱えて、女のところへと急いだ。
まだあたりは暗く、真っ暗な夜であるけれど、いずれは日の出の時刻がやってくるのだ。

女の体の下に布を引いて、それを引っぱって移動させた。
力を使うことは、普段から満足な食事をしていない体には堪えた。
何度もハアハアと荒い息をつぎながら、何とか目的の場所まで移動することができた。
体を起こして、自分の体に寄りかかる体勢にして、持ってきた水を飲ませてみた。
前に寒さで不精して、寝ながら水を飲んでむせたことがあった。
これだけ弱っているなら、さすがにむせるだろうと。
力のないぐったりとした体は重かった。
それでもひと口、ふた口と飲んだことに、ホッと息を吐いた。
冷たい体をその体勢のまま背後から抱きしめた。
前に女にされたように。
頬がぶつかるほどに体を寄せた。
冷たいけれど、呼吸にかすかに動く人の体はひどく安心するものだった。
嬉しいのか悲しいのか、わからないこの気持ちに、知らず涙が流れて女の頬を濡らしていた。
この気持ちは何なのだろう。
アイツに聞いたら教えてくれるのだろうか…。

朝を迎えた。
女は相変わらず眠り続けている。
もしかしたら、もう目覚めないのかもしれない。
冷たい体を抱いて寝てたため、ぶるりと寒気に体が自然と震えた。
女の背後から抜け出して、そっと寝かせて、茂った草で寝ているのが見えないことを確認した後、通りを目指した。
朝市の賑わいに紛れて、くだものを狙うのだ。
通りの店の脇に、流しっぱなしの水場で手早く顔を洗い、髪の毛を撫でて整えてみる。
目立つことだけは避けたい。
団体で動かないために、自分たちがいかに目立つかをわかっていた。
小奇麗な服装の人でいっぱいの通りでは、薄汚れた姿というのは目立つのだ。
今日ははじめて、自分が食べるためでないものを盗むため、なぜかいつもよりも緊張した。
何としてもそれを得て、早く戻らなくては。

通りに面した市場では、すでに人でいっぱいだった。
値切りなどの交渉などのやりとりで、賑やかというかうるさいくらいだ。
そして、見回すと、自分と同じく盗もうと狙う子供が、隙を狙って物陰に潜んでいた。
よく見ると、昨日見かけたのと同じメンバーがチラホラうかがえた。
人数がいる分、毎日のように盗みを働かないと間に合わないのだろう。
仕掛けようとしてるタイミングを見ながら、そのおこぼれにあやかろうと図った。
掴まるわけにはいかない。
奴らを囮にするかのように、自分の分を手に入れるだけのこと。

「こらーっ!!」

足に自信のある子が食べ物を盗む。
賑わいの中をくぐるようにして、通りを横切っていく。
追いかける店の人を、邪魔する担当もいる。
人とぶつかったり、物をひっくりかえしたりして、騒ぎを大きくするのだ。
買い物客の悲鳴や驚く声の中、地面に転がったリンゴを1個素知らぬ顔で懐に仕舞い込んだ。
別の方向にそっと離れて、通りを脱出する。
後は念のために路地を複雑に歩いて戻るだけ。
いつもなら、どこかで隠れて時間をかけて用心を重ねるのだが、そんな時間はなかった。
追いつけないであろうと小走りに路地を駆けて、遠回りをしながら、女のいる場所を目指した。

出かけた時と同じ佇まいにホッとして、寝ている女の脇に跪いた。
どうやって食べさせたらいいものか。
一口かじって、空腹だったために思わず噛み砕き飲み込みそうになった欠片を取り出すと、女の口に押し込んでみた。
ぐったりとした口は動こうとしなかった。
絞ればいいのだろうか。

「甲斐甲斐しいな…涙が出そうになるぜ」

不意に届いた背後からの声に、一瞬で凍りついた。
聞き覚えのある声。
あの2人のうちの一人だ。
動揺し、恐る恐る振り返ると、すぐ傍で不敵な笑みを浮かべて男は立っていた。
こんな近くに。
声をかけられるまで、まったく気がつかないとは。

「いよう…。生きてたか。しぶといガキだぜ、お前は」
「どうして…」
「おや。やっぱ、お前ちゃんとしゃべれんじゃん」

ニヤリと笑って、男は手にしている銃をクルリと手の中で回した。
思わぬ武器の所持に、目がそこに釘付けになる。

「ふふ…。カッコイイだろ?お前ら小僧がやりたい放題だからさ、通りを守る役割をやってんのよ」

チャキ。
銃口がゆっくりと自分に向けられる。
この男がそれを請け負っているとは知らず、話に息を飲んだ。

<つづく>→第4話http://morinodoukutu.blog.shinobi.jp/Entry/886/

さあ、石よ、来い!笑
キリのいいところって大概…すんごくつづきが気になる箇所になりますよね^^;

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