モリの洞窟
モリエールの妄想の洞窟へようこそ
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こちらも二年前に水をお題に書いた第三弾。
ショートショートというか^^;
ありきたりな展開です。
もちろんフィクションです。
隔離なんかされてませんから(笑)
この前戸棚をほじっていたら、ペロンと出てきた紙にこれが綴ってあったのを見つけて、加筆訂正してみたという。
ものを書くという魅力にすっかりはまっていた頃でしたが、あんまりネタが浮かばなくて、このお題ではこれで打ち止めだったようです。
場所をとるので、たたんでおきます。
それはある夏の夜のことだ。
すっかり日が暮れて、夏の星座が煌めき、穏やかな風がそよいでいた。
私は日課のウォーキングをした帰り道、近くのスーパーでミネラルウォーターを購入し、スーパーの名前の入った袋を片手にぶら下げて、家へと向かい、軽快な足どりで歩いていた。
林を過ぎればもう少しで家だ。
辺りは民家も少なく、夜道を照らす街灯はひどく間隔があいている。
虫の涼やかな声を聞きながら、さくさくと歩いていく。
その時だ。
突然どこからか、奇妙な音が流れはじめた。
虫の声とは違う。
どこかの家から聞こえてくるもの?
私は辺りを見回した。
今は夏。
どこの家でも窓は開けっ放しだ。
何か賑やかなTVの音が漏れているのかもしれない。
音はどんどん近づいてくる。
何だ?
どっかで聴いたことがあるこのメロディー…。
「チャ~ラ~ラ~チャチャ~~」
ン?
チャルメラ?
違う、違う。
もう一度背後を振り返って辺りをくまなく探してみる。
林の中には人影もないし、そんな音を出しそうな豆腐屋の車も見当たらない。
「チャ~ラ~ラ~チャチャ~~」
これは何の曲だったっけ。
ほら、えっと、何かの映画で…
え~と…未知との遭遇…?
あっ、そう!
ああ、それだ!
え~と、それでよかったよね?
一人納得して、ポンと手を打ち、納得したように空を見上げた。
澄みきった深い青の空には、ちょうど飛行機が横切っているところだった。
あれ?
訂正。
飛行機じゃないわ。
だって動いてない。
ってことは、あれは…ヘリ?
音…聞こえてこないよね?
絶対うるさい音するよね?
新型?
いややや、そんなはず…。
見上げていた光の点は、みるみる大きくなって自分に向かって降下してきた。
速い!
すごい速い!
「あひゃーーー!!!」
逃げることも屈むことも出来ないうちに、あっという間に光と風が起こって、まぶしさにただ目をつむるので精一杯だった。
いつまでも消えない光に、まぶしいながらも、やっとの思いで目を開けた。
「なあっ!?」
何と自分のすぐそばに、まるで映画のセットよろしくな宇宙船が、ふわふわとかすかに揺れながら地上からほんの少し浮いた状態で静止していた。
信じられないもののご登場に、頬を叩き、何度も目をこすってみた。
ありえないことに、その宇宙船は白昼夢のようには消えていかなかった。
そして、今まで聞こえていた虫の合唱も、この異常事態に、すっかり声をひそめてしまい、パタリと辺りは静まっていた。
どうやら、本物の宇宙船らしい。
目の前にはリアル宇宙船が浮いている。
この事実を心が受け入れた途端、どっと冷や汗が浮かんだ。
うわ~、どうしよう。
何でこんなところに。
でるなら、もっとふさわしい所に出てよ。
ここは田園地帯でもないし、モーモーさんもいないよ?
自衛隊の基地にはずっと遠いし。
うわ~、こんなTシャツにジャージズボンだし。
カメラなんてまったく持ってないし。
UFOと遭遇したって、話をしようにも証明できないじゃん。
驚いて、ちっとも動けない体の割りに、頭の中では色んなことがめぐっていく。
ウィィィィ~ン…
宇宙船の灰色のメタリックなボディの一部分が、音と同時にスライドするように開き、中から人影が覗くように顔を出してきた。
あのよく本やTVで目にするのと同じ、小柄でつるんとした顔をした宇宙人が、細い手で自分をこまねいた。
わからないまま、首を傾げつつも近づいていく。
「スミマセンが、アナタの持ってるミズを、ワタシにくれませんか?」
思いがけず日本語。
結構流暢。
「コレ?ですか?」
あまりに普通に話しかけられて、拍子抜けしたように呆けた顔で、ぶら下げていた袋を掲げた。
「コレ、ただの水だけど?」
コクコクと宇宙人は肩幅よりも大きな頭を揺らして頷く。
何だかE.Tみたいでちょっと可愛い仕草だ。
「まあ…いっか。どうぞ」
このナリではスーパーに買いに行けないのだろう。
E.Tの映画は好きだった。
うん、みず知らずの宇宙人だけど、親切にしてあげなきゃ。
手を伸ばしている宇宙人に、さらに近寄ってそれを渡した。
「いやあ、助かります。つまらないものですが、代わりにコレを」
袋を大事そうに抱えて船内に引き上げると、宇宙人はそう言って、光る石を差し出してきた。
はじめて見るその輝きに、思わず息を飲んだ。
そして、宇宙人は深々と日本式に一礼すると、ゆっくりと小さな扉は閉められて、来た時と同じに一瞬で夜空に舞い上がり、あっと言う間にわからなくなった。
「何だったんだ…今のは…」
まるで夢のような出来事だ。
現実感がまるでない。
でも、夢じゃない証拠に、手の中には光る石がしっかりと握られたままだった。
それは緑色の蛍光ペンのような光を常に発していた。
不思議な石。
「…これって、何の石…?」
そして、それから三日も立たずに、私は体調を崩して倒れた。
今や隔離された部屋で、息も絶え絶えの状態になってしまっている。
渡されたあの石は、何と放射性物質。
宇宙人には何ともなくても、私たち人類には有毒だ。
とんでもない物々交換となってしまった。
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