忍者ブログ

モリの洞窟

モリエールの妄想の洞窟へようこそ

[107]  [106]  [105]  [104]  [103]  [102]  [101]  [100]  [99]  [98]  [97
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


どこにそんな力があるのか、自分の体の半分にも満たない星の子に手を引かれて、オデコの広い見習い天使は夜色に染まりはじめた空を飛んでいく。

景色が糸を引くように、どんどん後方へ流れていく。

こんなに速く飛ぶのははじめてで、オデコの広い見習い天使はだんだんと意識が遠のいていった。



『…起きなさい…』

『…オデコちゃん…』

聞きなれた声が遠くで聞こえてくる。

目を開くと、目の前に屈み込む星の子と、セミロングの濃い金髪を後ろで結んだ上官の天使さまの姿があった。

(…?…これって、ゆめ…?)

二人の向こうに見える天井は高く、見たことのない部屋なのだ。

しきりに話かけている星の子の声がよく聞こえない。

耳が詰まってるような違和感があるのだ。

(…あ、あれ?このポーズって…?)

右の手の人差し指と親指で輪が作られている。

ま、まさか…。

「いったぁ!!」

突然走ったオデコの痛みに、オデコの広い見習い天使は飛び起きると額を押さえ呻き声をあげた。

「いつまでも寝ているからだ」

黙っていれば絵画のような美人顔なのに、上官の天使さまはつり目をさらに吊り上げて言い放った。

「ふぇ~ん。何にもしてないのに~」

「ごめんよ、オデコちゃん。ちょっと飛ばしずぎちゃったみたいで…」

あまりの速さに、オデコの広い見習い天使は失神してしまったのである。

「耳が変~っ」

「ツバを飲み込んでごらんよ。そしたら直るからさ」

星の子の言うとおりにオデコの広い見習い天使はやってみた。

すると、ようやくいつもの耳の感じに戻って、安堵の吐息をついた。

「ここ…、どこ…?」

落ち着いて、ようやく辺りを見渡すと、一層見知らぬ部屋であった。

そして上官の天使さまと星の子以外にも、普段話も出来ないような上層の天使さまがいて、オデコの広い見習い天使は背筋を正すと、あわてて立ち上がった。

「この子にはまだ、この任務は無理です」

上官の天使さまは、台座に座る上層の天使さまに向かって言った。

だが、上層の天使さまは、やわらかな表情を変えることなく、うっすらと笑顔を浮かべる。

「これもまたこの子の運命です。そなたが通ってきた道を、この子もまた行く。私たちに出来ることは…」

「…祈ることだけです…」

問いかけに、上官の天使さまは呟く。

そして思いつめた顔を、オデコの広い見習い天使へと向けた。

「これから、新しく天使が生まれる。それを迎えに行くのがお前の任務だ。 朝日が昇るまでにここに必ず戻って来なければならない…。やれるか?お前に」

「…私が…生まれてくる天使を迎えに行くんですか…?」

その重々しい雰囲気に、オデコの広い見習い天使は緊張を覚えた。

「そう、この星の子が案内についていく。今回はお前の順番なのだ」

「順番?」

考えてみたら、同じ年頃の見習い天使はほとんどいなくなっていた。

配置がえなどで、時々大きく移動があって気にとめていなかったが、確かに見なくなっていた。

けれど数人は見習いを終えて天使となってる者もいる。

「任務を終えたら、私はどうなるんですか?」

なかなか上手く出来ない雪降らしの仕事を干されてしまうのだろうか?

また新しい仕事で、いっぱいしかられるんではないだろうか…?

先のことをいっぱい想像して、オデコの広い見習い天使は真っ青になった。

「…先のことより、まずはこの任務だ」

威圧する声音に、オデコの広い見習い天使は首をすくめた。

「さあ…!時は満ちた。行きなさい、そして運命を選び取るのです」

上層の天使さまの声に、大きな扉がゆっくりと開いていった。

まばゆい光が溢れて一瞬目が眩んだ。

光が細長く伸びて、雲のトンネルが作られていく。

「さぁ、オデコちゃん、行こう」

扉の前に進んでいく星の子に、数歩追って行きながら、オデコの広い見習い天使は、後ろにいる不機嫌そうな上官の天使さまを振り返った。

「…わ、私…、頑張ります…っ」

「…お前が思う通りに…迷う時も思うままに決めなさい…」

「上官の天使さま…」

「さっ、オデコちゃん、行くよっ」

「私っ、精一杯やりますっ。だから…行ってきます!」

ものごころついた時から、ずっとこの上官の天使さまの配下であったオデコの広い見習い天使は、はじめて聞いた上官の天使さまのその声音に胸がいっぱいになって、涙を堪えて声を張り上げると扉へと向いた。

ゴッ☆

「いったぁ」

思いっきり間近に浮かんでいた星の子に頭をぶつけて、うめき声を上げた。

「何でそこに…っ、それに頭かったい…っ」

「ごめん、ごめん。だってボクって星だし…」

辺りで一斉に呆れたようにため息が吐かれて、二人は真っ赤になると、

「行ってきます!!」

扉をくぐって雲のトンネルに飛び込んでいった。

 

拍手[0回]

PR
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
お邪魔します!
こんにちはモリエールさん!
某所線画コンテストでこちらへのリンクを発見してストーカーのごとくお邪魔しましてしまいました。
モリエールさんの完成絵はもとより途中経過まで拝見できて、うはうはです。
しかも、オデコちゃんの活躍が拝読できるなんて!!
嬉しすぎます><
頑張れオデコちゃん!
モリエールさんのご活躍とオデコちゃんの今後をこそっと応援しております。
では、またお邪魔させていただきます~(´▽`)ノ
タルチ 2008/06/23(Mon)19:03:44 編集
タルチさまv
うおおお~!!
いらっしゃいませ~^▽^
伺ったときも、アドレス書こうかしらと思ったのですが、悪いかな~と思ったりして。
でもタルチさんがいらしてくれるとは嬉しいですv
しかも照れます。
オリジナル小説は考えてみたら初の挑戦なので、ずっこけないよう頑張ります>▽<
二次とはまた別の難しさが…(汗)

線画コンテスト絵を見てくれたのですか!
かなり緊張の参加なのです。
自分でも描きこみすぎてて塗れるのか心配ですが(笑)
本気絵よりも落書きの方が多いサイトですが、またぜひいらして下さいv
タルチさんのサイト、フリーということなんですが、私のサイトにリンクを貼ってもいいですか?
とチキンな私はここで訊いてしまったりして;;

嬉しい訪問ありがとうございましたv
モリエール 2008/06/24(Tue)01:03:48 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
[03/23 モリ]
[03/14 モリ]
[02/12 モリエール]
[02/10 水樹]
[01/12 ぎんの字]
HN:
モリエール
性別:
女性
趣味:
妄想

忍者ブログ [PR]
 Template by repe