モリの洞窟
モリエールの妄想の洞窟へようこそ
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「な、何で羽がついてるの…?」
見習い天使は眼を見張って、その白い物体を見つめた。
白い翼を持つのは天使だけなのに、その白い物体にも白い羽がついていた。
目と口から黄色い光を点灯させて段々近づいてくる。
「…!」
見習い天使は異変に気づいた。
死神が現れたときと同じような冷気が辺りに満ちるのを感じた。
それは、その白い物体から放出されているようなのだ。
「アナタはいったい…?」
目が離せなかった。
まばたきをするのを忘れて見つめてしまう。
何かが変だ。
心のどこかで警告が起きている。
なのに、見習い天使は動けずにいた。
点灯を続けている目と口から目が離せないのだ。
そして、とうとう間近となった。
滑らかな白い体が急にもこもこと動き始めた。
まるで中に何かがうごめいてるような動きだ。
複数の頭のようなものが出ようともがいているみたいであった。
そして、たくさんの白い手が湧き出るように白い物体から伸びてきた。
「ひ…っ」
その時であった。
見習い天使とその白い物体の間にキラキラした線がよぎっていった。
それは見覚えのある星のきらめき…。
「…星…の…子…?」
動かせない顔で、見習い天使は必死に目の端でその線の行方を追う。
「ま…って…、待って星の子ぉ!!」
声がはっきり出せるようになって、見習い天使の体は急に自由になった。
伸びてきている手から逃れ、星の子を追う。
「星の子!!星の子ぉ!!」
光の線は建物の角を曲がっていった。
見習い天使は、必死に後についていく。
「うあ!?」
曲がると、その建物の壁には例の翼のない白い物体たちが上を目指して歩いているところであった。
見習い天使の声に、登っていた足を止める。
ぶつかりそうになって、旗が下がってるポールに片手をかけて、見習い天使はクルリと回ると、地面へ向けて垂直に飛んでいった。
勢いを抑えて歩道に降り立つ。
そして上を見上げた。
「うげ!!ああああ~~っ」
休む間もなく見習い天使は歩道に沿って飛んでいった。
壁を歩いていた白い物体が一気にジャンプしてきたからだ。
見た目に反して軽い体は、空気に抵抗しながらフワリと降りてくる。
まるで縫うようにジグザクに、見習い天使はそれを避けて飛ぶ。
「何なの~!」
キリがない。
歩道の向こうにも、すでに白い物体が何体ものんびりした動きで集まってきている。
「!」
また視界の端に、キラキラした光の線がよぎっていった。
「星の子!」
見習い天使は迷うことなく、その光の線が入っていった路地に向きを変えて入っていった。
そこは人が一人通れるくらいの建物との狭間で、さすがに白い物体は体が大きすぎて入り込めずにつっかえてしまっていた。
「待って、待って、星の子!」
路地を曲がると二倍の道幅になった。
かなりいりくんでいて、建物の裏口なのだろう。ゴミ箱が何個も並んでいる。
蓋が開いていた一個に、追っていた光が入っていった。
ようやく追いついて、見習い天使は息をきらして、そのゴミ箱をのぞきこんだ。
「きゃ…っ」
何者かにお尻を蹴るように押され、のぞきこんでいた大きなゴミ箱の中に落とされ、そして蓋が閉まった。