モリの洞窟
モリエールの妄想の洞窟へようこそ
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かなりの距離を飛んだ頃、前を行く星の子は徐々に高度を下げていった。
見習い天使もそれに従ってついて行く。
「うわ~!建物がたくさんあるんだね~。ねぇ、星の子。まだまだ行くの?」
「もうちょっとだよ、オデコちゃん。この街を抜けた丘の上の一軒家だ」
華やかなネオンがきらめく街並みに、見習い天使は目を見張ってあちこちに視線をおくる。
「そんなにキョロキョロしてたら、電線にひっかかるよ、オデコちゃん」
「ほら、あそこにある線だよ。ひっかけたらこの街の灯りが消えちゃうから注意して」
「えっ!消えちゃうの!?」
見習い天使はあたりを見回して、星の子の言う電線があちこちに張られているのを見て、思わず肩をすくめた。
いつも何もない空しか見てなかった見習い天使には、どれもこれも不思議なものばかりなのだ。
「ねぇ、星の子。こんなに低く飛んでたら、人に見られちゃうんじゃない?」
「普通の人には、ボクらは見えないから大丈夫だよ、オデコちゃん」
「本当?」
「あんまり騒ぐと、雰囲気は伝わるみたいだけどね」
「そうなんだ…」
見習い天使は見えないことにホッとして、少し落ち着いて街並みを見れるようになった。
しばらく行くと、大きな高い建物は少なくなって、低い小さなかわいい家が多くなってきた。
家を取り巻く緑も多い。
道路もまっすぐではなく、くねくねと曲がって伸びている。
点々と続く街灯に沿って、飛び続ける二人だ。
「オデコちゃん、あの家だ」
肩越しに振り返って、星の子は声をかけると手でその家を指した。
木々に囲まれた、小さな一軒家であった。
犬の鳴き声がかすかに届いてくる。
周りの家とは違い、その家は煌々と窓から灯りがもれていた。
星の子について、大きく灯りがもれている二階の窓が覗ける高さの木の枝に二人は乗った。
部屋の中央にある大きなベットに、女の人が苦しそうに横になっていた。
その女の人の手を、心配顔で見つめる男の人が握ってそばに屈んでいる。
部屋の中には他にも白い服を着た年配の男の人や若い女の人がいて、忙しそうに歩き回っていた。
「…星の子…、新しい天使はどこにいるの…?」
見たところ、小さな子は見当たらない。
部屋の中には人しかいないのだ。
「まだ…みたいだね…。でも、もうすぐだ」
「もうすぐ…?」
星の子は悲しい顔で部屋の中を覗きこんでいて、見習い天使は首を傾げた。
「見てごらん、オデコちゃん。あのベッドで横になってる女の人…、おなかが大きいだろ?」
「う、うん」
「おなかの中にいる赤ちゃんが…もうすぐ天使になるんだ」
「えっ?それって、どういうことなの?」
「あの赤ちゃんは人の世界に生まれることができなくなっちゃったんだ…もうすぐ死んじゃうんだよ」
「えっ!?」
星の子は重々しく言葉を繋いだ。
見習い天使は、信じられない面持ちで、また部屋の中へと目線を注いだ。
「オデコちゃん…、君もあの赤ちゃんと同じように天使になったんだよ」
「ええっ!?」
弾けるように見習い天使は、星の子を振り返る。
そこには、からかってるわけではなく、真面目な星の子の顔があった。
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