モリの洞窟
モリエールの妄想の洞窟へようこそ
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勢いのあるうちに妄想を書き綴れ!
ということで今度のはちょっと短いですが、キリのいいところまで書きました。
少し色々なグロい表現の箇所がありますので、苦手な方はご注意下さい。
タルチさん、ねふぁさんに背中を押されて、何とか仕上がりました。
ありがとうございます~v
※この小説をはじめから読んでみたいという希少なお方には、サイドのリンクにある『小説「天使が生まれる日」』をお勧めしますv
ブログ形式と違って読みやすいです。
「くくく…。さすがに悪魔と言えど、身がすくむんだねぇ…」
懐から出された小刀の、小さくも鋭い刃先が月光にキラリと光る。
「バッカじゃないの…。寒いからだよ」
「ふっ。まあ、好きにほざいているといいさ」
死神は、またぐっと体を傾けてきて、悪魔の尖った顎を掴んだ。
元々暗めな色の悪魔の唇が、ガクガクと小刻みに震えている様を、死神は薄い唇を歪めて楽しそうに見つめた。
「さあて、中はどうなっているのかな、くくく…」
「うっ」
顎を掴んでいた手を離すと、長めの爪でツツ…と胸の間を掻いた。
少年の弾力ある皮膚の感触を味わい、そして指の腹で、その下のしっかりした骨を押し当てた。
「案外と、骨っぽいねえ」
「悪いか…」
「いや、悪くはないよ。見てみたいねぇ、この皮膚の下の骨格も」
「何だこの変態…!」
悪魔は押さえつけられている両足で死神を蹴ろうともがく。
だが、四方から伸びて押さえつけられている白い手の圧力に、膝と太ももがかろうじて動くくらいであった。
必死にあがく悪魔の朦朧とした眼に、死神は満足そうに微笑むと、頭をさらに下ろして胸の中心に唇を押しつけた。
「はっ」
悪魔が小さく声を上げ、背筋を波打たせた。
「くっく…、脈打ってるのが伝わってくるよ。おや、だんだん速くなってるねぇ」
「中が見たければ、さっさとやれよ…!」
顔を歪め、荒い息のもと、不快そうに言い放つ悪魔を、死神は顔を上げると肩を揺らした。
「わかってないねぇ。結果はもちろんだが、その過程も大事なのだよ」
「何がだ。この変態め…!」
「あ~あ、いい眼になってきたねぇ。切羽詰まってきたのが、眼に浮かんできてる」
「ちっ」
「まあ、こちらとしては、あまり時間もないことだし、お望み通りに」
「そんな小さなナイフで、切り開けるのかよ」
悪魔の捨てゼリフに、死神はニヤリと笑った。
月光を受け、仮面で覆われていない切れ長の二つの眼がキラリと光った。
凍てついた湖の寒々しい薄青のような瞳が、色も相まって冷たく悪魔を見据えていた。
「切れ目を入れたら、後はこの手で…」
死神は長い鎌の柄を持つにふさわしい、長く華奢なようでいて節々がごつい手を、小刀を持っていない片手だけ持ち上げると、悪魔に見せ付けるようにゴキリと音を鳴らして見せた。
「胸の骨を開いてやろう。ふっ、お前みたいな薄い胸など簡単なものだ」
「さあ、はじめようか」
首を軽く揺らして、迫ってくる死神に、悪魔は身動き出来ずにただ息を飲んだ。
しっかりと握り直された白刃が、注ぐ月の光の線を引きながら、胸に下りてくるのを直視していた。
「うぐ…!」
衝撃と激痛に押し殺した声が上がる。
悪魔の胸板がしなって、顎は天へと反り返る。
浅黒い皮膚につきたてられた刃から、少しの間を置いて、赤黒い血が盛り上がりはじめた。
「くっく。お~や、痛いかい?もっと痛くなるからねぇ」
悪魔の苦悶の表情に、楽しそうにしていた死神は、突如体をビクリと震わせた。
「何だと…?消え…た?」
悪魔の胸に小刀を突き立てたまま、それから手を離すと、慌てて手帳を懐から取り出した。
そして、急いでページを開くと、まるで舐めるようにあるページを見つめた。
「消失した…? まさか…、あの天使が…?」
信じられない様子で、そうつぶやくと、もう一度間違いがないか食い入るようにして見つめた。
「ちぃっ!こうしてはおられない」
手帳をやや乱暴に閉じて懐にしまいこむと、ひきつった顔で死神は立ち上がり、死人形に持たせておいた鎌を乱暴に取り上げた。
「小僧、残念だが、もう行かねばならぬ。お前はここでお人形さん達に吸い尽くされるがいい」
「はっ、そんなの…、黙ってされてるワケないだろ」
弱々しいその声に、死神は冷笑を浮かべた。
「そうだな。加勢されてもやっかいなだけ。念には念を…入れておくべき、だな」
寒さに加え、痛みと出血に朦朧としている悪魔は、あえぎながら死神が何をしようとしているのかを半ば閉じかけた目で追っていた。
手前に立つ死人形たちに合図して、左の足が持ち上げられる。
「何を…」
「時間がないので、手っ取り早くさせてもらう」
死神が何をしようとしているのか、悪魔が気づいた瞬間、高く宙にかかげられた鎌がするどく煌めき、血しぶきをあげて膝下を切断していった。
「うああああああっ!!」
肉と骨を切断する激しい振動に、悪魔は身をよじって叫び声を上げた。
足首を押さえていた死人形から靴下と靴を履いたままの足を受け取ると、死神はニタリと意地悪く笑った。
「私に関わろうとした代償だ。これに懲りて、もう茶々を入れるのはやめろよ。おっと、もう次はなかったな」
肩を揺らして押し殺した笑い声をあげると、ポケットからハンカチを取り出して、まるで手品のようにかぶせて足を消し去った。
「じゃあ、心ゆくまで可愛がってもらうんだな」
死神はほつれてボロボロなマントをひるがえして姿を消した。
「ちぃ…、持っていきやがった」
悪魔は憔悴しきった顔で、弱々しくつぶやくと、肩で大きく息をしながら周りの雰囲気をうかがった。
死神が去ったことで、効力が切れたのか墓の住人たちは崩れるように地面に伏せて動かなくなっている。
あとは大勢の死人形たちだけが、この墓地にいる。
吸い取るエネルギーがある限り、離れることはないのだろう。
悪魔は呼吸を深く、そしてゆっくりするように努めた。
頭の芯で、音がガンガンと鳴り響いている。
これ以上は危険だと知らせているように。
悪魔は目を瞑ると、小さく唇だけを動かして何かを唱え始めた。
途端に悪魔の印象がすうっと薄れはじめた。
氷が溶けて消えていくように、悪魔も小さくなって、死人形たちが押さえていた手足もまた消えていった。
攻撃対象がなくなって、死人形たちは体を伸び縮みしはじめた。
その隙間を縫うように、一羽の鴉が弱々しく飛び立った。
左側の足のない鴉である。
墓地の塀のすぐ外にある太くがっしりした枝振りの木にそれはとまった。
そしてみるみる鴉から姿を変化していき、元の悪魔の姿へと戻っていった。
「くっそ、忌々しい…!」
拘束から逃れ、冷気が去ったことで、切られた左の膝下からの出血が一段と激しくなっていた。
はあはあと浅く早い呼吸をしながら、太い幹を跨ぐように座り込むと、悪魔は目を瞑り、小声で何かつぶやき、光りだした手の平を切断面に当てた。
「うっく…!うあ…!」
苦悶の表情を浮かべると同時に、面したところから煙が立ち昇り、次第に煙の量が減り、ポタポタと落ちていた赤い雫も流れを止めた。
荒い息をしながら手を離すと、悪魔は自分の胸元を覗きこんだ。
突き刺さったままの小刀を、だるさを堪えてようやく手を動かして掴んだ。
呼吸を整え、それを一気に引き抜いた。
小刀を放ると、ぶわっと溢れ出した血を押さえるように手で覆い、同じように唇をかすかに動かして何かをつぶやいた。
そうして、一時的な処置を終えると、脱力して木の幹に背中を預けた。
「ヤバ…。意識とぎれそう…」
虚ろな目で、眼下に見える墓地の中で、自分を探して徘徊している死人形たちを悪魔は見つめた。
自分が消耗したのに反して、ずいぶん調子よさそうな動きを見せる死人形たちに、思わず苦々しい顔つきになる。
目線を今度は空へと向けた。
見習い天使とコウモリが向かっていった方角を、疲れきった顔で見つめた。
「アイツら…、どこまで行ったんだろう…」
丸い月はだいぶ傾いた。
空はまだどこも暗いままだが、夜明けまでそう遠くない時間となっている。
悪魔は目を瞑り、眉間を指で押さえた。
「…ジイ。ジイ、聞こえるか…」
掠れた声で呼びかけた。
ザザ…と木々が風にそよぐ音を耳にしながら、返事を悪魔は待った。
『坊っ!無事じゃったか!』
ジイの声は悪魔の耳の中に聞こえてきた。
甲高いその声は、疲労困憊の悪魔には耳障りな声であった。
「そっちは? ゲートに入ったか?」
死神が向かった今、もう到着してれば何の問題もない。
『ま、まだじゃ。今、疲れきってて高度が下がっとる。コラ、デコ!バッサバッサと飛ぶんじゃ!!』
『坊、そういうわけで、もうちょっとかかりそうじゃ。重い~、早くしないとワシが潰れるじゃろ~~!』
怒鳴っているのか、泣いているのかわからない声での返信に、悪魔は弱々しく頭を背後の木に寄りかかった。
「何やってるんだか。おいジイ、死神がそっちに向かった。急いでその場を離れろ」
『な!?なんじゃと?死神がこっちに?』
「ゲートに…早く入れ』
『今のデコじゃ無理じゃよ。死人形を解除するのに、荒技使いおったんじゃ』
「荒技?」
『死人形を解除するのに、全部じゃないけど、魂の一部を燃やしおったんじゃ』
「…あのバカ…。天使の輪をいったんそっちに飛ばすから、それを使え」
『じゃが、坊…、それはワシらの報酬…』
「…死神の思うようにはさせない…。絶対、報復してやる…」
ギリ…。噛みしめた犬歯で唇から血が一筋流れた。
受けた屈辱は、倍にして返さねば…。
やられっぱなしだったことが腹立たしく、とはいえ、今は動ける状態ではない。
悪魔は一息吐くと、両の手を重ね合わせた。
温めるように両の手をすり合わせて、ゆっくりと離していくと、ふたつの手の平の間から黄金色の天使の輪が現れてきた。
悪魔は念じながら、それを丸い球体に形を変えていった。
「もとの持ち主のところへ」
手を広げると、中から黄金に輝く鳥が現れて、大きな翼をしなやかに羽ばたかせた。
「ほお…。雀くらいのが出ると思ったら、案外と大きな鳥だったな」
手の平から飛び立って、暗い夜空を金色の光を引くように、その鳥は飛んでいき、すぐに見えなくなった。
それを見送るようにして見つめていた悪魔は、次第に意識が遠のいて気を失った。
うわわわわ!!この34夜はどこから突っ込ませてもらったらいいのやら!
うわぁ。悪魔くんが大変な事に。
死神さん・・・いい味出しすぎです~!!
非常に危ない人っぷりが炸裂してますね。
がっつり何度も読み返してしまいました。
そして、手帳やらハンカチやら色んなものを持ち歩いてる意外な几帳面さにキュンとしましたvv
死神ファンの私的に非常に美味しい34夜ご馳走様でございました。
そして、いよいよ死神さんが天使ちゃんの所に向かってしまいましたね。
消耗状態の天使ちゃんのピンチにドキドキです。
頑張れ天使ちゃん!
死神さんファンですが天使ちゃんを応援しています。
ではでは、お邪魔いたしました。
いやもう、どこも妖しくてすいません><;
点では、結構前から展開として決めてた悪魔の負け~なんですけど、線を引いてるうちに、死神が大変危ない人になってしまいました(苦笑
あ、でもタルチさんをうほうほ出来たようで、よかったです^^
几帳面(笑)何と言っても紳士ですから。
どこらへんとか聞かれると困るのですが、イメージは気品漂う英国紳士風でボロマント。
あ、ほら、アイテムは多いほうがいいですよねv
天使ちゃんなんかまったく持ってないですから、私思い(笑)
悪魔を攻めていじめるのはちょっと短めになりましたが、攻め文句が浮かびませんでした(爆
服脱がせるところとか、ノリノリだったくせに、です^^;
怒濤の展開となれるべく、続き頑張りますv
応援ありがとうございます!これを励みに、間延びしないでサクサクといきたいところです。
いじわる全開で、天使ちゃんとのやりとりになる予定です。ジイという突っ込みがいるので、何とかなるかな~笑
ご来洞窟ありがとうございましたv